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安倍晋三、菅義偉、小泉進次郎…なぜ日本人はかくも小粒になったのか【福田和也】

福田和也「乱世を生きる眼」

 

 

 小泉元総理が、ある種の際だった才をもっていた事は、確かでしょう。

 貪欲なマスメディアーーその欲深さはまた、日本国民全体のものであることは間違いありませんーーを逆手にとり、彼らの求めるものを与える代わりに手玉にとった手際は、見事としか云い様がありませんでした。

 でもそれだけの事です。

 政治闘争は、手段を選ばないというのは、洋の東西を問わない鉄則であるとはいえ、「刺客」と称するインスタント候補を出馬させて、反対派を浴びせ倒そうとする手口は、ある意味で議会政治そのものの自己否定に他ならないものでした。

 そして、そこまでして一体、国民は何を得たのか。

 あやしげな郵便会社だけではないですか。

 その「教訓」が、選挙民を多少とも賢明にしたと信じたいのですが。

 けれども、あの選挙ほど、現在の日本人の虚無を、何の信念も、確信も持たない様を示した事件はなかったと思います。

 そして私たちは、いまだその虚無を、克服していない。

 才人はいるが人物がいない。

 キャラクターがあっても人格がない。

 儲け話はあっても志はない。

 演出と自己陶酔があるだけで、本当の感動はない。

 幕が引かれれば自分が熱狂していたことすら忘れてしまい、狐につままれたような心持ちになるのです。

 こうした状況は、一朝一夕にはなおらないでしょう。

 まだまだ、続くと考えなければなりません。

 無意味な空騒ぎを何度も繰り返し、さらに繰り返させる事になるでしょう。

 なぜこんな事になったのか。

 日本から人物が払底して、小物ばかりになったのはなぜなのか。

 この事を、しっかり考えないかぎり、人物らしい人物は出てこないのではないでしょうか。

 いかにして、日本人はかくも小粒になったのか。

 その理由と本質を考える事が、今、一番、重要な事ではないか。

 私は、そう思っております。

 

※「なぜ日本人はかくも小粒になったのか」の理由については次回に続く

 

『福田和也コレクション1:本を読む、乱世を生きる』より本文一部抜粋)

 

 

 

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福田 和也

ふくだ かずや

1960年、東京都生まれ。慶應義塾大学文学部仏文科卒業。同大学院修士課程修了。慶應義塾大学環境情報学部教授。93年『日本の家郷』で三島由紀夫賞、96年『甘美な人生』で平林たい子賞、2002『地ひらく 石原莞爾と昭和の夢』で山本七平賞、06年『悪女の美食術』で講談社エッセイ賞を受賞。著書に『昭和天皇』(全七部)、『悪と徳と 岸信介と未完の日本』『大宰相 原敬』『闘う書評』『罰あたりパラダイス』『人でなし稼業』『現代人は救われ得るか』『人間の器量』『死ぬことを学ぶ』『総理の値打ち』『総理の女』等がある。

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